2014年12月23日火曜日

軍手のサンタ

「これは絶対お父さんにもお母さんにも言っちゃいけないことだけど、
サンタクロースってほんとは誰か知ってる?」
この時期になると、日本の子供同士の間でよくある会話です。
ぼくも子供の頃近所の友達にひそひそ声で言われたことを覚えています。

だけどうちはアメリカ式だったので、
兄弟も親も祖父母も関係なく、
みんながみんなにプレゼントをする習慣でした。
さすがに日本側の祖父母はその交換会には参加しませんでしたけど、
毎年アメリカの祖父母から綺麗に包装されたたくさんのプレゼントが
冷蔵庫ぐらいもある大きな箱に入れられて船便で届きました。
こんなに興奮することはありませんでした。

クリスマスの一、二週間前にそのプレゼントが届くと、
家の中で飾り付けをしたモミの木の下に積み上げます。
祖父母からは一人につき何個も包みがあったりするので、
ぼくは兄妹が四人ですけどそれに両親も含めると膨大な包みの量になります。
だいたい三十から四十個(もっとのときもあった)のキラキラした
プレゼントが山積みになった。

小さいものはボールペンから大きいものは自転車まで、
とにかくあらゆるものが包装されている。
で、子供から親へとなると子供はお金が無いですから、
何をプレゼントしたらいいのか悩む。
そこで母親はぼくらに“感謝の手紙”を書きなさい、と言う。

両親だけなら二枚手紙を書くだけでいいので簡単です。
だけどアメリカからプレゼントを送ってくれる人たちは、
祖父母、曾祖母、叔父、叔母、義理の祖母がいます。
つまりクリスマスには 七枚の手紙(祖父母は合わせて一枚)を書かないといけない。
しかも英語で。

ぼくはこの手紙を書くという仕事がとても嫌で、
中学生になった頃母親に
「アメリカからプレゼントを送ってくれるを断ってほしい」
とお願いしました。だけど断られた。

アメリカからはクリスマスだけではなく、
ぼくの誕生日にまでプレゼントを送ってくれる。
プラス五枚の手紙。
ああ……。なんて素晴らしい親類なんだ!

クリスマスプレゼントという喜びには、
感謝の手紙という憂鬱な仕事がくっついてやってくる。
そういうわけで近所の友達が「サンタクロースってほんとは……」
というような日本式クリスマスの話しをぼくにしてきたとき、
「君たちはもらうだけなの!?そんなのズルい!」
と日本式クリスマスを恨んだ。

せっかくもうすぐクリスマスなので、
クリスマスの話しを書こうと思いました。
こないだ保育士の先生がこんな話しをしてくれました。

「うちの幼稚園では毎年園児のパパにサンタさん役をお願いしてるの。
それで、つい先週お菓子の袋詰めを持ってサンタさんが来てくれたんだけど、
子供たちはサンタさんに名前を呼ばれてプレゼントをもらうのね。
もちろん子供たちは大喜び。

困るのがサンタさん役のパパの子供が呼ばれたとき。
贔屓にしちゃ困るのに、他の子と比べて握手がすっごく長いの。
抱きついちゃうんじゃないかってぐらい。
これは気付かれる、
って思うんだけど相手は子供だからただ喜んでるだけなんだけどね。

だけど一人ませた女の子がいて、すごく頭が良い子なの。
その子の番になってプレゼントを受け取るんだけど、
何度もサンタさんのほう険しい顔でを振り返るの。
あんまり真剣な顔してるから『Kちゃんどうしたの?』聞くと、
『あの人ほんとのサンタさんじゃない』って言うの。
『手袋に黄色い線があった。袖の中に見えたもん。
ほんとのサンタさんは仕事の手袋はつけない』
私は『サンタさんはオシャレなのよ』ってごまかしたけど、
絶対信じてないだろうなー」

みなさん、
サンタさん役を頼まれるようなことがあったら細部には気を付けて、
軍手はやめておきましょう。

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