2013年10月30日水曜日

大会に出場するということ

日本ピッツァ世界選手権は
[サルヴァトーレ・クオモ永田町]で行われました。
政治の中枢である永田町で開催された意図は、
政治的な力が働いていたわけではなく、
台風による影響で汐留会場からこちらに移動になったためです。

このお店の特徴は、なんといっても窯です。
床から天井までの高さに銅板を張り巡らした窯が
店内にピカピカ反射光を放っている。

ピカピカ系に飽きたら鎌倉の大仏や自由の女神みたいに、
緑青色にしても威厳が加わって良さそうですし、
もし万が一経営難に苦しむようなことがあったら
一枚一枚剥がして売ってしのげばいいです。
(神社の屋根の銅板寄付は一口3000円ぐらいだから、
このお店の大きい銅板は、ふむふむ。四口分ぐらいありそうだ)
何かと便利ですね、銅板は。

とにかく、こんな周りの景色を映す鏡のような窯の前が
職人達の表現の場となります。
半円の窯の前には半円になって審査員や観客が囲む。
相当な緊張感を味わうだろうと想像できます。

あっちを向いてもこっちを向いても敵ばっかりです。
「四面楚歌だ!」
人前に立つのが苦手な僕が出場者ならそう叫ぶかもしれません。
しかし、職人たちは進んでその戦場の地に立ちます。
彼らは何を求めるのか。金、権威、名声?
表現の喜び、アドレナリンの分泌、達成感?

そこで僕はナポリでもお合いしたWさんに伺ってみました。
僕「前回のナポリの大会に出場し、そして今回は日本大会に出場した。
ズバリそこから得られたものって何なのでしょう?」
W「うーん、得たものかー。……特にないかなー」

自分の番も終わってWさんは完全に脱力していました。
いや、そもそもWさんは会場入りのときに挨拶したときも、
力が抜けていて気軽に周りの人とも話していました。
僕はもう一つ質問してみました。

僕「また来年も大会に出場しますか?」
W「もう今年で最後かな」
Wさんは三十中盤の方で、とても柔和な印象を抱く。
むしろ自分のことよりも僕に関心を持つ。
W「君もピッツァを焼いているの?」
僕「はい、まだ駆け出しですけど」

ピッツァとは直接関係のない筑紫哲也ですけど、
アナウンサー業に関してこう言っていたのを思い出した。
「僕は人前で喋ることは苦手だけど、
場数をふんだだけだよ」

僕は一日の大会見学を通して、
「大会に出場することは何かを得ることではなく、
場数という足跡を残すことなのだ」
という教えを授かりました。











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