2013年8月6日火曜日

八ツ面怪談

今から十年数年前の話しです。
車の免許を取ってすぐの若いカップルは、
深夜のドライブを楽しんでいました。

まだ飲酒運転が厳しく取り締まられていないときで、
二人は共に酔っ払っていました。
西尾市の山の周りを走っていて、
八ツ面の麓のカーブに差し掛かったときです。

助手席に乗っていた彼女のKちゃんがビールの空缶を
酔って気分の良い勢いで窓から投げると、
「カラーン」と音が鳴りました。
ふと投げた方向を見ると、
丁度カーブの真ん中辺りに地蔵が立っていて、
その脇の草むらに空缶が転がっていました。

その後ドライブを終えて家に着き、
Kちゃんは車を降りるのにドアを開けようとすると、
腕がズキッと痛みました。
何だろうと思ってシャツをめくると、
腕が真っ青になっていました。
そのまま二人は別れて家に帰りました。

翌日、彼氏であるJくんは心配になって
電話をかけましたけどKちゃんは出ませんでした。
二日たっても三日たっても電話に出ません。
その三日目の夜、
Jくんが部屋にいると、
廊下のほうから音が聞こえてきました。
はじめは虫の音のようでしたけど、
近付くにつれて音がはっきり
「シャリーン、シャリーン」
と聞こえてきました。

コツ、コツ、という硬い音も一緒に聞こえてくると、
Jくんの部屋の前でピタッと音がやみ、
その後はただ沈黙があるだけです。
Jくんは部屋から出るに出られず、
結局朝になってやっと部屋から出れました。

Jくんは電話が繋がらないままなので、
Kちゃんの家に行ってみることにしました。
あのドライブの日以来、
Kちゃんはずっと熱を出して寝込んでいたのです。
もしかしたらと思ってKちゃんの腕を見ると、
まだ痛々しいぐらい青くなったままでした。

そこでJくんはKちゃんの母親に
ドライブをした夜の顛末を話すと、
県内の除霊で有名なお寺に問い合わせて、
お祓いをしてもらうことに決まりました。

その間Jくんの家では、
深夜過ぎの決まった時刻になると必ず、
「シャリーン、シャリーン」という物音が
部屋の外から聞こえてくる日が続きました。

お祓いをしてもらって数日経つと、
Kちゃんの意識が戻り、
少しずつ体調を戻していきました。
Jくんの部屋の外を徘徊する物音もなくなりました。

二人は結婚して今も仲良く暮らしています。

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