2013年4月15日月曜日

訝しき燻し儀式

引っ越しのために毎日少しずつ荷物運び出して、
家の中が空っぽになってきた。

ついこないだ、
台所の蛇口をひねると水が漏れはじめた。
風呂のお湯を張ろうと思うと水道管から水が滴りはじめた。
それを見た母親は「家が寂しがって泣いている」と言う。
僕は「この家もとうとうギリギリのところまで来ている、
一刻も早く逃げ出さなければ」と思う。

母親が玄関先にドライセージの束を置いた。
早朝や夕暮れ、葉巻に火を付けるようにして煙を焚いている。
それを見た近所の通りがかりのおばさんが、
「一体何をしてるの?」と聞いた。
母親は「セージで家をセーブしてる」と片言で答えた。
おばさんは「あらーそうなのーあははー」と笑って、
通り過ぎざまに「セージでセーブねーあははー」と言いながら去っていった。

たぶんそのおばさんには、
その行為がネイティブアメリカンの伝統的な儀式であることは伝わっていない。
ダジャレだと思われたか、
めんどくさいから関わらないでおこうと思われたかの、
どっちかだ。

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