2013年1月21日月曜日

立ち食いそば

豊橋駅で電車の待ち時間があるとき、
そしてそれがご飯の時間帯のとき、
ぼくは改札口をくぐった奥にある
立ち食いそば屋に行きます。

10分の待ち時間じゃ行けないです。
15分ならそばだけです。
20分あればそば一杯にいなり寿司を一コ付けれます。
30分あればどっか他に座れる店を探します。

そばが一杯300円です。
販売機で食券を買い、
カウンター越しにおじいさんかおばあさんに渡すと、
麺を一塊つかんで鍋に放りこむと30秒ほどゆがいて、
どんぶりにあける。

ネギとかまぼこに、
甘い細切れの油揚げを多めに入れてくれる。
これがいいんです、
この細切れの油揚げが。

油揚げといったらあの一枚ものの大きなのが一般的です。
たしかにあれは見栄えがいいです。
どんぶりの上にしっかりと掛け布団のようにかぶっていて、
〈きつねそば〉と名乗ることができる。

それに対して細切れの油揚げは四角くないせいで、
〈きつね〉という冠をもつことができない。
あの四角い面積と同じ量の油揚げが入っていても
名称は単なる〈そば〉なのです。

このそばには細切れの油揚げともう一つ特徴があります。
それは、黒い汁だというとこです。
これは東三河風なのか?
ふつうのかけそばの汁にくらべて黒い。
たぶんしょう油を多めに入れてるんだと思うんですけど、
でもしょう油辛いとまではいかない。
甘辛めの汁です。
この二つがつい寄りたくなるポイントになってます。

もしそばに一枚ものの油揚げが乗っているとしましょう。
そうすると、油揚げと個人的に付き合う時間が必要になる。
なぜなら四角い油揚げは、
麺といっしょにつかんで口にいれるのが難しい。
細切れなら一切れずつ麺の中にまぎれこませて
すすることができます。

つまり、そば、そば、そば、でいけてた量が、
そば、油揚げ、そば、油揚げ、そば、というふうに、
一杯のそばを食べる作業工程に大幅な遅れが出てしまう。
トヨタの工場でそんな余計なことをしていたら、
間違いなくクビになってしまう。

なにもそんなに急いで食べる必要はないのに、
とスローライフ推進派はいうかもしれません。
立ち食いそば屋好きはこういうでしょう。
ああ、残念ですね、立ち食いの醍醐味を楽しめないなんて。

基本的な体勢は左ヒジをつき、
(ふだんは行儀がわるいけど、
立ち食いの場合それをかっこいいと考える)
フーフーフーフーフー、としてから、
ずるずるずるずるずる、といく。
立ち食いそば屋のそばはすぐに出てくるからとにかく熱い。

3〜4度その上下運動をくり返し、
左手でどんぶりを口にもっていき、
箸で麺を向こう側に押しやって、
ズズズズズズズズズズと汁をすする。
レンゲはない。

フーフーフーフーフー。
ずるずるずるずるずる。
ズズズズズズズズズズ。

とにかく自分がうるさい。
でもこの騒がしいのが、
おなじ食べ物でもちがう食べ物を食べるぐらい、
おいしくなったりするんです。

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