2012年12月27日木曜日

記憶に残る食べ物映像

人にとっていちばん記憶に残る映像は、
どんなタイプの映像なのか。

心がドキッとする美男美女、
トラウマに触れるような嫌なイメージ、
夢に見るような理想の楽園、
変なポーズ(タイタニックとか明石家さんまみたいな)。

僕はこれは、〈食べ物〉に関するものだと確信してます。
昨日はマーティン・スコセッシの『グッドフェローズ』を見ました。
それはもう、映画自体は面白いです。
でも記憶に残るのは、食べ物のシーンです。

『グッドフェローズ』はマフィアの話です。
強奪、殺人、脅迫ずっとそういうかんじなんですけど、
たまに〈食べ物〉のシーンがぽつんぽつんと
存在感をもって入ってきます。
その部分だけ編集して鮮明にしてるんじゃないか、
と思うぐらい印象的です。

たとえば、主人公のヘンリーが逮捕されて、
刑務所のエピソードに切り替わるところがあります。
その最初のシーンは、
ニンニクをカッターの刃で超薄切りにしている
どアップの映像です。

切り替わったとき何をやっているのか
ぜんぜん分かりません。
画面手前の緑(パセリ)、
一面のベージュ(まな板)、
画面奥に転がる黄緑の丸いもの(オリーブ)、
艶光りした人間の爪、
その爪がにぎる銀色のカッターの刃先、
透け透けの極薄ニンニクスライス。

「ムショでの楽しみは飯だった。
パスタではじまり肉か魚料理と続く」
というセリフが入って、
(刑務所の中でマフィアたちがコース料理を作るところが面白い)
やっと料理のビビッドな映像だということが分かる。

もう一つ面白い〈食べ物〉映像があります。
麻薬捜査班のヘリコプターに追われながら、
相棒に銃を届けないといけなく、
さらにコカインで混乱しながらヘンリーが作りかけの
トマトソースを気にする一連の流れです。

車でヘリコプターを振り払おうとしながら、
逃げ込んだ家で自宅に電話をかけて、
弟にこう言います。
「おい、ちゃんとトマトソースをかきまぜてるか?
ぜったい焦がすなよ!」

それで弟が
「分かってるようるさいなー」
というかんじで受け答えしながら、
かき回すトマトソースもまた印象的でうまそうです。

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