2012年11月15日木曜日

人間の総和

フォークナーの『響きと怒り』を読んでいます。
僕の〈良い小説〉だと感じるパロメーターは、
その小説が人間はどんなものかを、
うまく説明してる文章があるかどうかです。

「人間とはその人の不幸の総和だと父はいった。
がいずれは不幸の方がくたびれるかもしれないと人は思うかもしれない、
だがそうなると今度は時間がお前の不幸となるのだと父はいった」

「人間とは風土的体験の総和だと父はいった。
人間とはそうしたなにかの総和だと。
あいまいな性質はうんざりするほどに廻り廻って結局答えはゼロになり、
埃と欲望の行き詰まりだと」

この『響きと怒り』というのはぜんぜん笑える小説じゃありません。
たまらなく不幸な話しが、
そんな雰囲気をなるべく出さないように抑えて書かれた話しです。
でもそれが読む人を引き込む力になってます。

僕もそれにならって人間を定義しようと思いましたけど、
「人間とは乳をソワソワした数の総和だ」
という文章より先が続きません。

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