ランチも終盤戦のときでした。
トースターの戸の隙間から黒い煙がもんもんと上がっています。
尋常じゃない悪魔の化身のような煙です。
何だ?何が起きたのだ?
僕は切りかけのズッキーニを片手に仰天しました。
トースターのガラス戸を見ると中が真っ赤になっています。
そういえば僕はパンをアルミホイルにくるんで焼いていた。
彼を救出せねば!
僕は海猿張りの正義と勇気で、
ズッキーニを放り出してトースターの戸を開けました。
すさまじい勢いで炎が飛び出てくる。
僕は慌てて戸をまた閉める。
救出不可!メーデー、メーデー!
僕は叫ぼうとしました。
「誰か!えらいことになっとるぞ!!」
でも厨房を見渡しても誰もおらず、
レジのところではスタッフがお客さんと談笑などしながら、
平和にお会計などが行われています。
そこで僕はもう一度勇気を出して、何か道具を使おうと考えました。
すぐ近くに霧吹きがありました。
僕はすかさず霧吹きを取る。
トースターを開けるとまた恐るべき炎が立ち上がりました。
僕はすかさずその憎き炎に向かって、
霧吹きのグリップを全力で振り絞る。
シュコシュコ、シュコシュコ。
ぜんぜん利かない!
僕はまた戸を閉めました。
でも呆然としているうちに炎が弱くなってきて、
中で燃えて真っ黒になったアルミホイルも取り出せました。
火災探知機が鳴ったのは、事も済んでほっと一息ついたときです。
スタッフみんなも厨房に戻ってきて、
お客さんも何だ何だというふうに厨房が注目されました。
だから僕は何事もなかったように、
村上春樹ならこうクールに振る舞うだろうといった感じで、
やれやれと苦笑いで肩をすくめてみました。
やれやれ。
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