2012年7月23日月曜日

トースター炎上

トースターが黒い煙を噴いていたのは、
ランチも終盤戦のときでした。
トースターの戸の隙間から黒い煙がもんもんと上がっています。
尋常じゃない悪魔の化身のような煙です。

何だ?何が起きたのだ?
僕は切りかけのズッキーニを片手に仰天しました。
トースターのガラス戸を見ると中が真っ赤になっています。
そういえば僕はパンをアルミホイルにくるんで焼いていた。
彼を救出せねば!
僕は海猿張りの正義と勇気で、
ズッキーニを放り出してトースターの戸を開けました。
すさまじい勢いで炎が飛び出てくる。
僕は慌てて戸をまた閉める。
救出不可!メーデー、メーデー!

僕は叫ぼうとしました。
「誰か!えらいことになっとるぞ!!」
でも厨房を見渡しても誰もおらず、
レジのところではスタッフがお客さんと談笑などしながら、
平和にお会計などが行われています。

そこで僕はもう一度勇気を出して、何か道具を使おうと考えました。
すぐ近くに霧吹きがありました。
僕はすかさず霧吹きを取る。
トースターを開けるとまた恐るべき炎が立ち上がりました。
僕はすかさずその憎き炎に向かって、
霧吹きのグリップを全力で振り絞る。
シュコシュコ、シュコシュコ。
ぜんぜん利かない!
僕はまた戸を閉めました。
でも呆然としているうちに炎が弱くなってきて、
中で燃えて真っ黒になったアルミホイルも取り出せました。

火災探知機が鳴ったのは、事も済んでほっと一息ついたときです
スタッフみんなも厨房に戻ってきて、
お客さんも何だ何だというふうに厨房が注目されました。

だから僕は何事もなかったように、
村上春樹ならこうクールに振る舞うだろうといった感じで、
やれやれと苦笑いで肩をすくめてみました。
やれやれ。

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