りょうちゃんは子どもの頃、
小さなかわいい花を見つけて、その名前を調べてみようと思いました。
ぶ厚い植物事典を引いてみると、そのかわいい花は「オオイヌノフグリ」だということが発覚しました。
雑草なんですけど、コバルトブルーの花を咲かせて、
メルヘンな気分になってもおかしくない植物です。
オーシャンではスイーツにこの小さな花を添えたりしてます。
飾り付けには色々つかいます。
ミントやマジョラムなどのハーブ、
野菜の頭につく花、
名前がわからないけど蔦みたいな葉っぱなどなど、
季節のデザインを楽しんでもらおうという魂胆です。
そんな色んな飾り付けのなかに、
「オオイヌノフグリ」が入っていました。
このフグリが何かを先に言っておきますと、
これは金玉という意味です。
その昔まだあどけなく、ピュアな世界にいたりょうちゃんは、
植物事典でこの事実に突き当たり、
しばらく立ち直れないほどのショックを受けたと言っています。
小さくてかわいいコバルトブルーの花が、
実は犬の金玉だった。
その結果りょうちゃんは、
この花を触ることができなくなってしまった。
メルヘンな世界はがらがらと崩れてしまったのです。
幾年かが過ぎてりょうちゃんは、
厨房でスイーツが飾り立てられているプレートをふと見た。
そこにかの「オオイヌノフグリ」がいた。
かわいく、コバルトブルーの花が、ちょこんと乗っている。
「フグリだ!」
「フグリって○○だけど、いいのかな?」
りょうちゃんは顔を赤らめて言った。
しかし言った相手がわるかった。
「笑えるー。でもかわいいねー」
ヤンキー名残りを漂わせるナオミは答えた。
そのあとりょうちゃんは、
「ハーブテーを1つお願いしまーす」
とおばあちゃんみたいなオーダーをしていた。